新しくサウナ棟が完成します!
現在建設中のサウナ、つたやの’’蒸け風呂’’(ふけぶろ)がいよいよ完成します。
何年も前からずっと構想を練ってきたサウナがようやくできあがるので私たちも楽しみにしています。
今回、私たちがこの地にサウナをつくるにあたって、改めて地域の歴史を辿り、この土地にあるべきサウナの形を探りました。
また、日本の温泉の歴史において考察すると、今はお風呂といえばお湯に浸かることですが、日本最古のお風呂は蒸し風呂で、そしてそれは山岳信仰、山の文化と関わりが深いものであったとわかりました。
当サウナ棟は旅館のすぐ裏側のになり、サウナ室内に腰を下ろすと五色沼と湯殿山が正面に見え、とても開放感があります。
元々湯殿山への参拝者が多く通ることからできたこの志津という地域に、山と深い関わりがある蒸し風呂を作るにあたり、湯殿山にまつわる要素を取り込んだ空間にしたいと思いました。
ここにある意義のあるもの、ここにしかないものを、体感していただけたら嬉しいです。
”蒸け(ふけ)風呂”とはつたやでつくった言葉です。由来についてはこちらです。↓
阿頼耶蒸け風呂という名前の由来について
山の文化と風呂には深いつながりがあります。古く山人の家業には風呂屋の経営があり、その風呂は湯船に入るのではなく、蒸し風呂であったとされます。また民俗学者の柳田國男は山伏が好んで洞窟で修行することも、風呂と関わりがあり、「風呂」と洞窟を意味する「室(ムロ)」は同じ語源だったのではないかと推測しました。
奈良の法華寺にある現存する日本最古の風呂もやはり蒸し風呂です。そこには風呂で蒸されることで心身を清浄にしようとする思想があり、三重には若者が風呂で蒸されることで祭りにふさわしい清らかな身体をつくり、獅子舞をおこなう風習もあります。
古くから山の麓などで地中から湧き出す温泉に特別な治癒の力があると考えられたのも、上記のような文化的な背景があってのことだと考えられます。信仰に関わる体を清浄にする「斎(ゆ)」という言葉が、のちに「湯」に変化したという説もあります。山伏文化が根づく出羽三山の奥の院とされたのが湯殿山であったことも、そこに湯に対する信仰をみることができます。
また蒸し風呂の文化は海外ではサウナとなり、とても重要な儀式としておこなわれてきました。北欧の人々やアメリカ先住民がおこなっているスチームサウナ、スモークサウナ、スウェットロッジがよく知られているものですが、人類共通の普遍的な文化と日本の山の文化のつながりを感じさせる例と言えるのではないかと思います。
山伏は母なる胎内と見立てた山の中で修行することによって、日常生活の中で心身に蓄積してしまったケガレを清浄にしようとし、それを「六根清浄」といいます。六根とは視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚、それに意識を加えた人間の感覚のことです。
生きていれば、どうしてもクセのようなものが身についてきます。ペンの握り方や歩き方、話し方や考え方。どうしても偏ってきてしまうそれらの感覚をリセットして赤ん坊のような状態に戻ろうというのが六根清浄です。
六根は意識できる感覚のことですが、より深い無意識の根源に「阿頼耶識」、さらに深く「阿摩羅識」があると華厳教などの仏教教典では説かれます。一より小さな数の単位にも、「一、分、厘、毛、糸、忽、微、繊、沙、塵、挨、渺、漠、模糊、逡巡、須臾、瞬息、弾指、刹那、六徳、虚空、清浄、阿頼耶、阿摩羅、涅槃寂静」といったように阿頼耶識と阿摩羅識は登場します。
つたやは400年の間、山に詣でる人々と寄り添ってきました。山をめぐり日常の汚れを落とし、さらに蒸け風呂で心の原点に回帰し、生命の活力を日常に持ち帰ってもらいたい。そんな思いが蒸け風呂の名に込められているのです。
10月〜プレオープン、12月〜本オープンを予定しています。